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昨今のミュージアムをめぐる問題というと、独立行政法人化の動きがある。日本版エージェンシーといわれるこの動きは、要は従来、国が面倒をみてきた博物館も、今後は法人として独立して事業を行なっていきなさい、という話だ。
その詳細はまだ不確定な要素が多いが、ミュージアム自身が独立性をもって知恵を出しながら運営していくという考え方自体は基本的に賛成だ。しかし、一方で、文化を事業化していくことが本来できることなのか疑問もある。現在のミュージアムにいきなり民間事業者のようにやれ、といっても無理な話で、まず、国や行政が財政面など基盤となるインフラをきちんと整備することが重要だろう。そのうえではじめて各館ごとの運営活動を考えろ、というような筋道がまず必要だと思う。現状の混乱は、そのガイドラインもないことによるものだ。
たとえば、国立博物館のもつ資料は国有財産だが、事業化をいうならばこれらを館独自の裁量のなかで自由に処理できるのか、といった部分も定かではない。
文化の事業化を考える際には、まずミュージアムにとって自らの資産とは何かを明確にすることが重要。ミュージアムにはまず展示資料、それを研究する人、そして情報の3つの文化資産がある。従来のように展示だけに依拠するのではなく、これら3つの柱の有機的な組合せが事業の成立に不可欠だろう。
わたしはミュージアムおよび展示関連企業が情報の収集・交換を行なう「文化の市場」の必要性を感じ、97年に「関西ミュージアム・メッセ」を企画、開催したが、その背景となったのは、小さなミュージアムが1館だけで運営していくことのむずかしさだ。ことに事業化となると、ミュージアム同士をはじめ、ミュージアムと大学、ミュージアムと企業など、お互いが連合するなかで新しい価値を創造していかなければ、1館で悪戦苦闘してもできることに限度がある。各館のもつ資産、特徴を基盤にしながら、ある特定のテーマ設定を軸として、横断的な企画を行なえるような環境になると、ずいぶん面白くなるだろう。
たとえばメーカーの企業ミュージアムであれば、各社の「お宝展示会」をやっても面白い。各社が最初につくった商品、つまり製品第1号をさまざまな業種にわたって横断的に一堂に集めるなど、モノと時代を縦軸と横軸に切り結んでみると従来とは異なった新しいモノの姿が見えてくるかもしれない。これはひとつの館ではできないことだ。
また展示会にとどまらず、こうした連合の動きはフォーラムやシンポジウムという形でも活かせるだろう。
また利用者にもメリットが大きい。これまでの名所旧跡を回るだけの旅行とは違って、各種の特徴あるミュージアムを組み合わせることでこれを周遊するような新しい観光のスタイル──わたしは“文化観光”と呼ぶが──も生じてくるだろう。すでに都内墨田区や神戸市など一部では形になっているが、ミュージアムとミュージアム、さらにミュージアムと地域の他の観光資源を柔軟に組み合わせていくと、人の動きというのはずいぶん変わっていくのではないかと思う。
価値観の多様化する時代だけに、こうした組合せは無数に可能だろう。これはちょうど現在の衛星放送の多チャンネル化と同じで、ある分野に特化することで一定の市場を確保することができるようになるはずだ。かならずしも、従来のようなマスメディアのように総花的ではなく、規模は小さくても特化することで支持を得ることは可能だ。これがネット化していくことで、さらに思わぬ新たな魅力の創出につながるのではないか。こうして人が動けば、そこにお金も落ちるはずだ。
たとえば、「宇治市源氏物語ミュージアム」を例にとると、源氏物語というのは全国的に普遍性の高いテーマだ。そして全国各地に源氏にまつわる所蔵品をもつ美術館や博物館も少なくない。それらをひとつの横断的なテーマで束ね共同することで、相互の交流ができていくのではないか。企画展やシンポジウムだけでなく、源氏物語ツアーなども企画可能だろう。さらに同館の場合、名誉館長として有名作家の瀬戸内寂聴さんがいる。また、ちょうど源氏物語が誕生1000年を迎えるというタイミングもある。源氏というテーマをもとに、さまざまな事業化というものの可能性は大きく拓けると思う。
今後は抽象論ではなく、実体のあるものとして、こうしたミュージアムを結ぶ連合を具体化していくことがますます重要になってくると思う。わたし自身もそうした刺激を生む場のひとつとすべく、2000年開催に向けて第2回めのミュージアム・メッセを鋭意企画中である。 (談)
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